浅田次郎 『五郎治殿後始末』を読了。
「箱館証文」がなかなか興味深い。
「拙者敗候而一命貴殿二御預致候 随而ハ後日 本証文ト引替 一金壱千両之命代御支払致候 武士之二言無之 万端必ず御約定致候」
「刀をおめえの咽に当ててへし切ろうとしたときよ、俺ァふいにばかばかしくなったのさ。なんでえ、同なし国の人間じゃあねえか、ってね。で、情けをかけられたとあっちゃあ、おめえも後生が悪かろうから、思いついて借金証文をかかせたてえわけだ。どうでえ、妙案だったろうがい」
江戸から明治にかけての戦いの中での話だが、これは作者の創作なのだろうか。こんな人間らしい人と人とのやりとりが、実際の戦場においてなされたことを期待したい。