弓道

2022年春から弓道を始めた。市の弓道会が講習会を開催してくださり、続けている。

まずは礼儀作法。歩行、入退場、すべて作法がある。また、取り懸け、手の内、打ち起こし、大三、会など一つ一つの動作をきちんと修得しないと射はうまくいかない。呼吸も大切である。動作を行うたびに吸い、吐きながら終える。

マスターするのに10年はかかると言われる。生きているかどうかわからないが、行けるところまで粘り強く進んでみようと思う。が、下手にやると矢が顔に当たったり、左腕をかすめたりして、恐怖を感じることもある。

ポイントは、力を入れないこと。打ち起こしでは肘を意識しながら掬い上げる。大三で弓手を廻しすぎない。会へは、馬手は肘で引く。弓手の手の内を正しく整え、押しをきちんと行う。呼吸に合わせて動作する。

道着、袴の着付け、弦張りなど、慣れないことばかりで緊張の連続であるが、日本文化を学ぶことの楽しさを感じるとともに、日本文化の持つ深さも感じている。因みに、弓道は武芸のうちの最高位に位置付けられているとのことである。

Giulio Cesare

クストゥ作 ルーブル収蔵

ヘンデルのジュリオ・チェーザレを新国立劇場で観劇した。チェーザレ マリアンネ・ベアーテ・キーランド(メゾソプラノ)、クレオパトラ 森谷真理(ソプラノ)、コルネーリア 加納悦子(メゾソプラノ)、トロメーテ 藤木大地(カウンターテナー)、セスト 金子美香(メゾソプラノ)、ニレーノ 村松稔之(カウンターテナー)、等の各氏が演じた。音楽は、リナルド・アレッサンドリーニ(イタリア)指揮による東京フィルハーモニー交響楽団である。

休憩を挟むとは言え、4時間余りに及ぶ公演を飽きさせることもない、各歌い手の熱演ぶりに圧倒された。ヘンデルのバロックオペラ特有のレチタティーヴォとダカーポアリアを見事に歌い上げていた。音楽の美しさや楽しさを背景にオペラの醍醐味を存分に味わうことができた。中でも、クレオパトラ役の森谷氏の透き通っていて明瞭で伸びのあるソプラノが印象的であった。また、バロックオペラの花形カストラートは現代ではカウンターテナーが担っているが、ニレーノ役の村松氏のカウンターテナーは最初男性とは気づかないほどであるとともに、ユーモアのある演技は好演であった。

ロラン・ペリー(フランス)演出による舞台は博物館の倉庫の設定で、登場人物に合わせて彫像が運び出され、観客を歴史の中に引き込む効果をもたらしていると感じた。パリオペラ座でも使用された舞台道具であろうか、一つ一つの彫像や絵画が大きく、オペラ全体の迫力を倍加させていた。

Orfeo ed Euridice

楽譜イラスト1764

オペラ「オルフェオとエウリディーチェ」を新国立劇場で観劇した。

オルフェオをカウンターテナー ローレンス・ザッゾが、エウリディーチェをソプラノ ヴァルダ・ウィルソンが演じた。演出、美術、衣裳、照明は勅使河原三郎、冥界の世界を一切の無駄をそぎ落として表現し、歌手の声を際立たせていた。

「オルフェオとエウリディーチェ」はグルックの作、ウィーンのブルク劇場で1762年に初演され、その後途切れることなく世界の歌劇場で上演されている。平明、簡潔に示されたドラマ性、音楽と詩の一体化が聴く者を惹きつける。

オルフェオはギリシア神話に登場する吟遊詩人、全知全能の神アポロンにより竪琴の名手となり、死後琴座となる。その妻、エウリディーチェは新婚早々に毒蛇にかまれ冥府に。オルフェオが冥界に行き、エウリディーチェを連れ戻そうとする。振り向いてはならぬと言われていたものの、耐えきれず振り向いた瞬間、エウリディーチェは息絶えるが、オペラでの結末は如何に。

エレガンス

脚本家大石静さんによると、フランスのエレガンスの真の意味は、自己と他人の双方に対するリスペクトにあるとのことである。フランスやイタリアを旅していると、それなりに人生を生きてきた人々の瞳や言葉、たたずまいや行動に尊厳を感じることがよくある。職業を問わず、人々は堂々としているし、自分の哲学を持ち、自身の生き方に自負や誇りをもって生きているように感じる。見事なティアラにしても、それを身に着ける人にセルフリスペクトの人生観とそれに基いた人生の積み重ねができていない人間には、ティアラは似合わない。お互いにリスペクトし合えるように、まずは自分磨きをしなければと、この年になっても感じてしまう。

骨董の魅力

フランスの蚤の市の様子を伝える番組を見たが、蚤の市には貴重な骨董がたくさん眠っているようだ。とは言っても骨董探しには、それを見出す眼力と見識が必要である。リヨンの絹織物は18世紀中頃、フランス革命前の王室によって支えられ発展し、特に王室画家フランソワ・ブシェ等の素描をモチーフにして金糸、銀糸で織られたタピストリーなどは極めて貴重なものであることを知る。また、ガラス工芸品も、エミールガレ、ドーム兄弟などのアールヌボー時代の作品、ルネ・ラリック等のアールデコ時代のオパールセントと呼ばれる技法の作品など、各時代の特徴、作風や技術の変化などを理解した上で探してみると大変面白そうである。陶器も、一概にリモージュと言っても、リモージュのカオリンは20世紀中頃には掘り尽くされてしまったため、それ以降は他の産地のカオリンが使用されているとのことであり、それ以前のリモージュに価値ありとされるようだ。また、それ以降でもル・タレックによる絵柄のパリ製のリモージュはまたそれで価値があるようである。他に、ベルナール・ヴィルモのポスターなど、骨董にも様々なジャンルがあり、それぞれに奥が深そうである。知らないことばかりだが、最近訪れたナンシーでガレやドームの作品を見てきたばかりということもあり、骨董への興味が一段と高まった。