池波正太郎 『真田太平記』

池波正太郎の『真田太平記』新潮文庫全12巻をようやく読了した。最も魅了された本の一つに数えられる傑作である。

昌幸、長男信之、次男幸村は、真田家が生き残るために豊臣方と徳川方に分かれたものと理解されがちであるが、この書を読んで、それぞれが各々にとっての義に生きたのだとわかる。人それぞれに定めがあるような人生の中で、それぞれが義を貫く生き方の美学を強く感じた。昌幸は、上杉景勝から受けた恩義を忘れずに徳川に抗する立場を貫いた。また、幸村は、大谷刑部の娘を嫁にしたこともあり、父昌幸と運命を共にし、父亡き後も、半ば負け戦になるとわかっていながらも豊臣方につき奮戦し、大坂夏の陣で最期を遂げた。信之は、本多平八郎忠勝の娘を嫁にして、徳川に忠誠を尽くした。さらに、滝川三九郎のような、与えられえた運命をすべて受け入れていく飄々とした生き方も大いに美しい。真田家を助ける草の者の世界も見事に描かれている。人生は誰もが死に向かって生きていくことになるが、その中で、守るべき価値を何に求めるのか、どこに見出すのかが問われる。

今月は『真田太平記』の世界にどっぷりと浸かるひと月となった。信州、関ヶ原、滋賀、京都、大坂あたりの旧跡をゆっくり辿ってみたい気分である。

NASDAQ-世界を変えた証券市場の歴史(翻訳版)

ナスダック証券市場の歴史を著したMark Ingebretsenによる原書 ”NASDAQ A HISTORY OF THE MARKET THAT CHANGED THE WORLD”を翻訳し、「NASDAQ-世界を変えた証券市場の歴史 増補新版」、昨年末(2023年12月)をアマゾンから出版しました。ナスダックを中心とした米国の証券市場の歴史とその中でナスダックが資本市場において果たしてきた役割、そして21世紀初頭におけるナスダックのグローバル戦略構想について詳細に記した書籍の翻訳書です。原書が発行されてから20年が経ちますが、このたびこの20年間の変化に関する原著者による補筆が完了したことから、補筆分の翻訳を加えた増補新版としてこの翻訳書を出版することとしました。アマゾンのウェブサイトは次のとおりです。

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訳者である私がこのナスダックに関するこの原書に最も感銘を受けたのは、一つには、新興企業の成長及びそれら新興企業のイノベーションがもたらす産業や経済全体の発展をナスダックが資本創造のエンジンとして支えてきたそのダイナミズム、また一つには、20世紀初頭当時のフランク・ザーブ会長が24時間/7日間のグローバル市場構築を目指していたその先見性である。特に後者に関して、通信業界に携わっていた訳者は、グローバルインターネットが目覚ましい勢いで拡大普及していく状況にあった当時、このグローバル証券市場構築の可能性と成長性を強く感じ、事業提携の可能性について模索していたことを記憶している。

原著者によれば、原書は、米国金融業界関係者や企業財務責任者等に広く読まれたほか、ハーバード大学など米国のビジネススクール等でも経営幹部向け教材として使われた書籍です。今回発刊の翻訳書についても経営層、財務責任者、ビジネスマン、ビジネススクールの教員、学生等、日本の幅広い読者の皆様に是非ご一読いただきたい書籍です。

原著者Mark Ingebretsenについては、次をご参照ください。

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窓ぎわのトットちゃん

黒柳徹子さんの「窓ぎわのトットちゃん」を読む。

黒柳徹子さんがトモエ学園で教えを受けた小林宗作先生のこと、トモエでの日々が記されている。小林宗作先生はパリでダルクローズからリトミックを学び、帰国後の昭和12年、自由が丘にトモエ学園を創立し、昭和20年戦争で焼失してしまうまで、リトミックを通した自由で人間味のある教育に尽力された。その後、トモエ再興の夢は叶わなかったが、国立幼稚園園長や国立音楽大学の講師などとしても貢献された。

あらすじ

机のふたをばたばたしたり、窓際からチンドン屋や燕とお話したりの生活でトットちゃんは前の学校を退学、トモエ学園にやってきました。電車の教室をすぐに気に入ったトットちゃん、初めて出会ったのにトットちゃんの話を4時間も聞いてくれた校長の宗作先生となら、ずーっと一緒にいたいと感じました。

海のものと山のもののはいったお弁当の話。どこにすわっても自由な電車の教室。一日に学ぶことを自分の興味に沿って自由な順序で勉強。「お弁当を食べる前にうたう歌」を合唱してからお弁当。午後は散歩で、自然や歴史を学ぶ。トイレに財布を落としたトットちゃん。「おっかあ、こいつは御の字だぜ」で、落語はご法度。新しい電車の教室、どのように運んでくるの。はだかでプール、恥ずかしさや劣等感を忘れさせる。講堂で野宿。小児麻痺の泰明くんと木登り。九品仏で肝試し。コンサートマスターの父、指揮者ローゼンシュトックの練習所。土肥温泉で海水浴。音楽を耳ではなく、心で聴き、感じるリトミック、心と体にリズム、こころとからだの調和、想像力と創造力を豊かに。一生のお願い、ひよこの死。一番悪い服で鉄条網くぐり。がに股の高橋君。トイレに落ちたトットちゃん。「それからさあ」で、皆の前でお話。狼ごっこでかみついたロッキーをかばう。ブルマーをはきたかった運動会、高橋君が優勝できる運動会、野菜がごほうびの運動会。素直で、生活を詠んだ一茶を愛した小林先生、俳句を通して人間、自然を考えることを。電車で拾った5銭玉、無くなった不思議。手でお話。ベンケイ、しくしく、天野屋利兵衛は男でござるの丸山先生。チョーセンジンと言うマサオちゃん。おさげをいじめた大栄君、小林先生は女の子を大切にと。トットちゃん、志賀高原でサンキュー、スキー名人シュナイダーからサンキューで大人としての対応。新しい電車は図書室に、おならする娘の結婚のおはなし。先生、障害のある高橋君にしっぽの発言に怒り。白鳥の湖へのあこがれ。畠の先生。トドロキケイコクハンゴウスイサン、鍋ぶたとってアチチチと指を耳たぶへ。「トットちゃん、きみはほんとうはいいこなんだよ。」泰ちゃん、相撲で投げ飛ばしておよめにしてくれない。「トモエ学園、いい学校、はいってみてもいい学校。」リボン、学校にはつけていかないことに。兵隊さんをお見舞い、よーくかめよの歌に涙。噛んで苦いと病気だとわかる木、20銭。アメリカから来た宮崎君から英語やアメリカを親しく知る、外では戦争が。学芸会で義経役も山伏役もできなかったトットちゃん。はくぼくでリズムを音符に。木に登った泰明くんの死。賢い泰ちゃん、スパイは無理と教えてくれた。キャラメルの出ない販売機、軍歌は弾かないパパ。トモエ学園の先生になる約束。シェパード、ロッキーの死と残された毛。良ちゃんの出征とサワカイ。トモエが焼けた。