伊豆箱根湘南風土記(12)鎌倉 円覚寺帰源院

円覚寺帰源院

円覚寺の山門を潜って右手奥に進むと帰源院という名の塔頭がある。普段は観光客は入れないとのことであるが、と或るきっかけからこの塔頭の存在を知る機会を得た。

この帰源院にはかつて漱石が短期間ではあるが滞在し、その間に小説「門」を創作したとのことである。当時の漱石自身の心境を基に、親友に対する裏切りに悩み葛藤する青年の心情を描いた作品とされる。帰源院に至る坂道の手前に横長の手水台があり、その側面には「漱石」と記されている。夏目漱石はこの手水台に記された文字を自分のペンネームにしたと言われているようである。何気無いひっそりとした佇まいではあるが、歴史を耳にすると妙に更に詳しく知りたい気持ちに駆られる思いがした。